難治性便秘
従来から便秘の治療は行っていましたが、便秘で当院を受診される方の中には通常の下剤が効かない重症型の方が少なくありません。このような方を適切に治療するには、じっくりと時間をかけて十分な問診や診察、特殊な排便機能検査を行う必要があります。
下剤が効かない便秘とは
便秘と言っても、実はいくつかのタイプがあります。あなたは、どのタイプに当てはまりますか?
- ① 便の回数が少ない
- ② 毎日出るが、量が少なくすっきりしない
- ③ 便を出すのに苦労する
- ④ 便意を感じないので、時間を決めてトイレに行く
- ⑤ 肛門の周りを指で押さないと出ない
①のタイプは、腸の動きが遅く、市販薬を含めてたいていの下剤が有効。
②の場合は、腸内の便を十分に出し切れていなく、下剤の使いすぎや便排出力の低下が疑われます。
③のタイプは、下剤が効かない”スーパー便秘”の可能性があり、「風船療法」と呼ばれる特殊な排便訓練が有効です。
④の場合ですと、便を我慢する習慣を続ければ、直腸の感覚が鈍り、便を認識できなくなり、直腸内に便が充満して地力では出せなくなります。
⑤では、長時間強く息むような排便を繰り返すと、直腸の一部がふくらみポケットができることがあり、特に女性では、膣側にポケットができやすくなります。
③・④・⑤のタイプは、便が肛門近くにまで到達しても便意は感じないか、出したくても出せない「直腸性便秘」で、通常の便秘治療ではなかなか改善しません。直腸性便秘の中でも、特に治りにくいのがスーパー便秘やポケット便秘。こうした特殊な便秘を診断するためには、詳細な問診や検査が必要です。
スーパー便秘の早期発見法は?
トイレに入っている時間が長くなったり、一度排便しても、またすぐしたくなったり、便意は感じず、ウォシュレットや浣腸(かんちょう)で刺激しないと便がでない場合は要注意です。
スーパー便秘の原因は?
スーパー便秘は世界的にみても、まだ研究が進んでおらず、はっきりした原因は不明です。
しかし風船療法というリハビリ治療が有効であるため、何らかの後天的な要因が影響していると推測されます。
例えば、便を我慢してしまい、硬くなった便を無理やり出す、イボ痔や切れ痔になって排便時に強い痛みを感じるようになる、すると意図せず肛門に力が入ってしまい、スーパー便秘になるというものです。
実際に、患者さんの中には、痔疾患を持っていたり、便を我慢する習慣があったり、便が毎日出ないと気が済まないので、浣腸をしてでも無理やりに出すといった人も少なくありません。
その他にも骨盤腔の病気(子宮脱や直腸癌、前立腺疾患など)の治療歴、脊椎疾患、糖尿病などの影響もありそうです。
排便障害を体系的に診断・治療している医療機関は、全国でもごくわずか 排便がスムースに行われるには、便の形成、便の移送、便の貯留、便意の知覚、便の排出といった5つのプロセスが必要です。
どのプロセスに問題があるのかを見極めるためには、X線不透過マーカー入りカプセルを使用した「腸管通過時間測定検査」、擬似便を使って排便の様子をX線撮影する排便造影検査、肛門括約筋の働きを調べる直腸肛門機能検査などの特殊検査が必要で、これらをすべて行える施設は全国でも数えるほどです。
治療方法は?
食事の時間や内容、運動、睡眠時間といった生活習慣を改善し、排便のタイミングや排便姿勢、排便時の呼吸法などを工夫することによって、排便はもっと楽にできるようになります。
このような基本治療に加えて、あなたの排便障害のタイプに合った薬剤の投与やバイオフィードバック療法(医療用の風船を用いたリハビリ)を行います。
当院では、専任の臨床検査技師や皮膚・排泄ケア認定看護師が懇切丁寧に排便アドバイスを行っています。
なかなかよくならない便秘でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。