小学生時代、それは女性が便秘を自覚し悩みはじめるときです。当院が平成八年に行っ た、「小学生の便秘とトイレに関する調査」の結果を男女を比較しながら簡単にご紹介しましょう。「自分は便秘」と自覚症状を訴える子どもの割合は、低学年ではほとんど男女差がありませんが、高学年では男子に比べて女子は四倍近くになっています。また「便通の回数が三日間で一回以下」と答えた子どもは、低学年では男子がやや多くなっているのに対し、高学年では男子の一・五倍近くになっています。さらに「過去に四曰間以上便通がない状態が続いた」子どもは低学年・高学年を問わず女子がそのほとんどを占めています。この結果から、小学生のころからすでに、女子が男子に比べて便秘に苦しんでいる様子が読みとれます。
小学生には過度のストレスや睡眠不足、朝食を食べないなどの生活習慣が原因で起こる便秘はほとんどないようです。しかし、”便意の抑制”には問題があるようです。男女を問わず、何と七~八割が便意を「よく我慢する」「ときどき我慢する」と答えています。この割合は学年が上がるほど増加しており、「学校で大便をしない」子どもも全体の六割以上を占めていたのです。
学校で大便をしない理由は、①学校の便所が汚い、臭い ②休憩時間が短い、落ち着かない、遊びで忙しい ③冷やかされる、いじめられる、恥ずかしい ④便意がない、などです。ここで特徴的なことは、男子は③の理由が際だって多いのに対し、女子では①②の理由が多いことでした。
便秘の原因はこのような学校での便意の抑制に関係があるようです。この問題を解決するためには、学校のトイレ環境の整備・改善などハードウエア部分と、休憩時間の延長、排便に対する羞恥心(しゅうちしん)の緩和(かんわ)などのソフトウエア部分の両面から大人が考えていく必要があります。
“快適に排便できる学校づくり”は、なにも学童期だけの問題ではありません。学童期に習慣づけられた排便抑制は、習慣住便秘につながるのです。ですから、学童期に便意を我慢しない環境づくりをすることは、便秘の発生を防いでいるのです。