喫煙が健康に悪いことは、よく知られています。しかし、日本人は”のん気者”が多いせいか、喫煙者は一向に減らないようです。統計によれば、成人男性の喫煙率は59%、女性の場合は15%で、欧米諸国に比べると、いずれも2~3倍の高い数値になっています。
たばこは、肺がん、膵臓(すいぞう)がんなど、多くのがんの発症に関係しています。それには「依存性の原因」といわれるニコチンやタールよりも、たばこの煙に含まれる過酸化水素が大きく関与していることが分かっています。喫煙者本人はもちろん、近くにいる他人の健康まで損なわせてしまう危険性があるわけです。
それでは、こうしたたばこと痔の関係についてご説明しましょう。結論からいえば、たばこは痔を引き起こす直接的な原因にはなりません。ただし、ニコチンには便を柔らかくする作用があることから、吸い過ぎで起きた下痢のせいで、肛門が炎症を起こしてしまう場合もあります。しかしながら、痔への影響を考えるなら、たばこの本数よりも、むしろたばこをスパスパやるような状況に身を置くことの方が問題です。何時間も座りっぱなしのデスクワーク、延々と続く会議やマージャン、宴会などは、”おしりの大敵”で、痔を引き起こしたり、悪化させたりしかねないからです。
一方、たばこに含まれるニコチンは腸を刺激してぜん動を活発化させるため、痔の原因である便秘解消に役立つこともあります。そこで、便意を誘うために食後の一服を習慣にしている人もいます。けれど「便秘や痔は治ったが、がんや心臓病になってしまった」では、元も子もありません。たばこは控えてほしいものです。