ゴルフ仲間のHさんが突然、診察室に現われました。私の顔を見るなり「もう限界だと思いまして」と困った様子。「どうしたんですか?」と診察してみると、Hさんの言葉通り、”出ずっぱり”の肛門はすぐにも手術が必要な状態でした。よくよく話を聞いてみるとHさんはゴルフのたびに、相当苦労していたようです。ラウンド前にまず入浴し、お尻の調子を整え、そしてショットした後は、周りの人に気付かれないようズボンの上から指で肛門を押し込んでプレーを続けていたそうです。しかし、そのうち歩いているだけで”出てくる”ようになり、「これはもう限界」と、当医院を訪れる決心をしたそうです。
では、なぜゴルフをすると肛門が脱出するのか、その”原理”はこうです。ゴルフはボールを叩く瞬間、肛門にグッと力が入ります。すると、肛門にはうっ血が起きるばかりではなく、うっ血が固まった状態(痔核)の人はスイングのたびに痔核を押し出すことになります。特に肛門の縁に痔核がある人はその瞬間、肛門の血管がプクッと膨れ上がり、発作を起こすこともあります。これでは確かに痛みや出血でゴルフどころではありません。
一般的に、スポーツは全身の血行を良くし、肛門部のうっ血はとれます。また腸の働きも高まって便秘の解消にもなり、痔にはなりにくい。「スポーツ選手に痔は少ない」というのはこうした理由があるからです。しかし、例外もあります。相撲や柔道、サッカーのゴールキーパー、野球のキャッチャーなどのポジションなどは、姿勢そのものからして痔になりやすいと思われます。ゴルフも痔を治してから楽しむことをお勧めします。きっと今回紹介したHさんも、取ったいぼ痔の数より、ハンデは上がったのではないでしょうか。