第24話 便失禁  恥ずかしがらずにケア 

「知らないうちに便が漏れて下着を汚してしまうんです」。Dさん(74)=女性=は、同居しているお嫁さんと一緒に来院しました。二年前より生理用品が手放せず、かといって病院にもかかりづらく、そのまま一人で悩み放置していたそうです。診察の結果、Dさんは肛門の筋力低下による便失禁でした。

便失禁は患者さんにとっては耐え難い症状ですが、しゅう恥心と、命にかかわらないという理由から放置されている場合も多いようです。また、恥ずかしさと苦痛のために無気力になり、友人や家族から見放されることにもなりかねません。しかし、人間は年をとるにつれ生理的、肉体的変化がおしりにも現れるのは当然のなのです。ですから、恥ずかしがることもありませんし、適切なケアの仕方を本人、周囲の人々が理解しそれを実行していければいいのです。また、高齢者はさまざまな原因で慢性の直腸性便秘症になりがちです。直腸に硬い便がぎっしり詰まり、おしりから漏れることがあります。これは寝たきりの高齢者に起きやすいのです。

便失禁ではありませんが、「明治天皇紀」によると、あの明治天皇でさえ、病床期の床で便意をもよおしたが、便器を使うのが嫌なのでかわゆに立とうとしたところ、止めに入った子爵ともみ合ううちにやむを得ず褥中(じょくちゅう=布団の中)で排便をしてしまった、といいます。

いずれにしても高齢者特有の問題です。今後、私たちの誰もが経験することかもしれません。その時に自分なりに冷静に対処できるのでしょうか。下(しも)のことは重要な問題です。本人はもちろん、周囲の理解、基本的な知識を持ってみんなで「豊齢者社会」を目指したいものです。


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