「夜、寝る前に飲んでください。翌朝には自然なお通じをお約束します」。女性週刊誌の広告で、特に目立って多いのが便秘薬。
当院が1995年3月、OL509人を対象に実施したアンケート調査でも、女性の半数以上は便秘の傾向があり、特に20代のOLでは約60%が便秘傾向であることが分かりました。
それだけ便秘に悩んでいる女性が多いことは事実のようですが、便秘薬が重宝がられる理由はそれだけではないようです。
最近の女性は、朝とても忙しい。シャンプーやメークなど、おしゃれに時間が取られます。便秘気味だとトイレに時間がかかりますから、トイレに行っている余裕などありません。
寝る前に便秘薬を飲んでおけば、朝起きてトイレに座るや否や、すーっとうんちが出てくれますから大助かりです。たまっていたうんちが出ると快適で、おなかペチャンコになりますから、スタイルを気にする女性には特にありがたいようです。
ところが、市販薬には思わぬ落とし穴があります。便秘薬も常用すれば、効果がなくなってきます。効き目がなくなれば、使用量を増やすか、より強い薬へとエスカレートしていきます。他の薬物と同様、中毒症状が出て、薬を飲まなければうんちができなくなる「便秘薬依存症」となってしまうのです。
市販薬の多くは、刺激性の下剤です。民間療法で用いられるアロエもまた、刺激性の下剤で、便秘の症状、程度に応じた処方や使用がなされていないのが実態です。
常用すると、腸はほとんど自然な動きをすることがなくなり、腸内にたまったガスを自然に出すことができず、おなかが膨らんでしまいます。すなわち、腸が本来持っているぜん動運動を十分に行えなくなるのです。
当然、いきむための腹筋も発達しませんし、腹筋の使い方も分からないので、出産シーンで「いきんでください」と言われても、いきむことができない女性が少なくないようです。
便秘はそれ自体憂うつであるだけでなく、痔(じ)や大腸がんの原因になるといわれ、甘く見てはいけない「病気」です。便秘気味というだけで、安易に市販の便秘薬に頼るのは危険です。
「薬を飲めば楽チンじゃん」という短絡的な認識は捨て、自然な排便リズムを日常生活の中で身につける努力を心がけることをお勧めします。