近所の小学校から戻ってきた長男(7歳)が、慌ててトイレに駆け込んだのに気付いた。大便の用を足しているらしい。さっぱりした顔の長男に「我慢することはないだろう。何で学校のトイレでしてこないんだ」と尋ねたところ「きたないし、くさいし、格好悪いし、それに恥ずかしい」との答えが返ってきた。そこではたと、小学生時代の自分も同じたったことを思い出したが、長男は「和式トイレを使ったこともない」とも付け足した。
当院が平成8年に行った小学生304名に対する調査によると、「学校でうんちをする」という子供は2割以下しかおらず、学校で便意を催しても我慢するという子供がほとんどでした。
子供達が「学校でうんちができない」理由の第一は、家庭のトイレ環境と学校のトイレ環境のギャップが大きすぎるということが挙げられます。学校では、各トイレに洋式を一個配置し、残りは和式としているのがほぼ共通のパターンで、学校に洋式を設けたのは怪我をした子供への対応のためといいます。
また、「匂いを他人に嗅がれたくない」「大をしたことがバレると友達から冷やかされる」といった理由もあります。授業中に手を挙げて「うんちがしたい」と言おうものなら、即刻いじめの標的にされてしまうというのです。
その一方で、休み時間終了のチャイムと同時にトイレに入り、大をする子供がいるそうです。当然、授業に遅れますが、「うんちをしたことを友達に知られたくない」のが理由です。
さらに、学校生活にゆとりがないことも障害になっています。トイレに行こうにも、休み時間が5分か10分では無理。我慢に我慢を重ね、お腹が痛くなって保健室に駆け込まなくてはトイレに行けないのが現状です。
いま、便秘で悩んでいる子供が増えています。朝食抜き、夜ふかしといった生活リズムや排便リズムの乱れが大きな原因ですが、決して本人のせいばかりではないようです。見過ごしてしまいがちですが、学校教育の現場にも、便秘の子供をつくる要因が潜んでいます。
今後は「形態」「匂い」「清潔感」「空間(広さ)」などのハード面の学校のトイレの環境改善とともに、「うんちをするという行為は決して恥ずかしい行為ではなく、楽しい行動なんだ」という意識教育を両輪にした啓蒙活動が必要ではないでしょうか。