「先生、どうですか。この笑顔、すてきでしょ」。最近、当院で取り入れた「笑顔療法」の一環として看護婦やスタッフは今、鏡を見ながら笑顔をつくる練習に励んでいます。
当院では便秘ケアにおける身体的アプローチとして五感へのアプローチを行ってきました。ヒーリングアート(視覚)、アロマテラピー(臭覚)、でるでるマッサージ(触覚)、すいすいセレナーデ(聴覚)、ファイバー食品の開発や食事療法(味覚)などです。
今、これらの療法とともに注目し実践しているのが精神的アプローチとしての「笑い療法」です。笑うと気分がいいものです。笑いは、自分だけでなく周囲をいっぺんに明るく し、患者さんとのコミュニケーションやストレスの解消などに役立ちます。
「精神神経免疫学」によると、笑うことは精神系や内分泌系、あるいは免疫能に良い働きをもたらし、人間に本来備わっている自然治癒力を高め、病気の治療に効果があるといいます。もちろん、がんにも効果があるそうです。
笑うという行動には、口を開ける、声を出す、おなかがよじれる、手を上げる、ついでに足も上げるなど、実にいろいろな体の動きが伴います。
こうした動きが副交感神経の働きを強め、自律神経のバランスを良くするのです。副交感神経は血圧を下げ、消化や吸収、排せつを正常化する働きがあります。同時に、笑いは心の緊張がほぐれますから、ストレスが関与する病気である便秘、痔(じ)にも良いよう です。
また、笑うことで食欲も出て、よく眠れ、声が大きくなり呼吸も楽になります。さらに、大笑いは、腹式呼吸のひとつの形であり、腹筋・横隔膜の強化につながり、排便が楽になったというケースもあります。
笑いは人と人の距離を縮めます。毎日の診療で患者さんと接する時、そうした笑いの持つ力を活用するのは、むしろ当たり前のこと。しかし、笑いの持つ自然治癒力に目を向け、それを治療プログラムに取り入れることは非常に難しいものです。
ところが、「面白いことを考えたり、笑顔をつくるだけでも効果がある」という実験結果があります。そうした実験結果を踏まえ当院で始めたのが、冒頭の看護婦による鏡を使った笑顔指導なのです。看護婦が進んで笑顔をつくり、患者さんに接し、あるいは患者さんにも笑顔をつくってもらう。
「笑う門には福来たる」といいますが、最近、私は「笑う門には健康来たる」と言い換えるようになりました。