最も一般的な痔は、男女ども、俗に「いぼ痔」といわれる内痔核です。年齢的には四十職以上の中壮年に多く見られます。
最もはっきり分かるのが、排便するときに痛みもないのに鮮やかで真っ赤な出血がある場合です。肛門の口側からの出血は色が鮮やかではありません。便の外側に血がついてくるときもあります。
おしりを紙でふくとき、脱出物があったり、肛門に何かぶら下がった感じで痛みはないのに、残便感があるのも、いぼ痔の可能性が高いと考えられます。大便が近くなる傾向もあります。ただ、最近は温水でおしりを洗浄する便座の普及で、おしりの脱出物があることを、なかなか気づかない人もいます。違和感があれば、清潔な紙などを手に触ってみて、状態を確めてみるよう勧めます。
内痔核は、実は程度の差はあってもだれにもあるとされています。便やガス(おなら)が漏れないように肛門部分を閉じるクッションの役割を果たす部分が大きくなったものです。通常より大きくなりすぎた、あるいは出血し脱出するようになったりすると、病気としての内痔核として問題となるわけです。
原因は、排便で強くいきみ、便座に長時間座り続けたため、肛門に負担がかかることなどが考えられます。また、妊娠後期に子宮が大きくなり左右の腸骨静脈が圧迫され、分娩時の強いいきみも重なって、内痔核が起きたり悪化したりもします。
症状の度合いで四段階に分類されます。
- I度は排便のときに出血しますが、痔核は飛び出ません。
- Ⅱ度は排便時に痔核が脱出し、その後は自然に戻ります。
- Ⅲ度は排便時に飛び出した痔核を、手で押し込まねばならない段階。
- Ⅳ度だと排便に関係なく、常時脱出したままです。
治療は、I度なら、肛門科で処置を受けた上、便通を整え、肛門を清潔に保ち、長い時間、力むような動作をしないなど日常生活を変えることで、痔と仲良く生活していけます。よりよい食生活も、医採機関で指導を受けられます。
しかし、残念ながらⅢ度、Ⅳ度、あるいはI度、Ⅱ度でも出血があり貧血のときは手術が必要です。手術は以前より痛みも少なく、入院も1、2週間ですむ場合が多いです。
内痔核の治療を受けた人からはよく、「排便後の始末に時間がかからなくなった」との感想をききます。内痔核のほかにも、最近急増している大腸ポリープや、大腸がんなどでも肛門から出血するケースがあります。排便時の出血は軽視しない方がよいです。安易に自己判断せずに一度専門医の診断を受け、原因を明らかにすることが必要です。
備考:この記事がかかれた時期には、ジオン注硬化療法はまだ認可されていません。