「痔ろうは」別名「あな痔」と呼ばれ、細菌の感染により直腸や肛門が化のうして起きる病気です。切れ痔が女性に多いのとは違って、青年期から中年期の男性に多く見られるのが特徴です。
直腸と肛門の間にある「歯状線」という部分には「肛門小窩」と呼ばれる小さなポケット状のくぼみがあります。
疲労など体の抵抗力が落ちているとき、このくぼみに便が入り込むと、大腸菌などの細菌によって炎症を起こします。この炎症が直賜や肛門周囲にまで広がり、膿がたまることを「肛門周囲膿瘍」といいます。その膿が破れて出たあと、そのほとんどが直腸と肛門を結ぶ管を形成します。この管が、痔ろうなのです。
多くの場合、痔ろうの原因は下痢です。柔らかい下痢便は肛門小窩に入りやすいからです。そのほか、先天的に肛門小窩の深い人や、排便時に強く力む人も痔ろうになりやすいと言えます。
痔ろうが自然に治るケースはあまりありません。肛門周囲膿瘍の段階なら、肛門まわりの皮膚が赤くはれ、常に痛みを感じ、悪寒や発熱を伴います。これが痔ろうに発展すると痛みをさほど感じず、下着を汚していた膿も次第に出なくなり、治ったように思われます。しかし、これは膿の管がふさがってしまっただけのことで、しばらくすると膿がでてくる「悪循環」を繰り返します。
痔ろうは火山活動に似ていて、肛門周囲膿瘍が噴火、噴出するマグマが膿、噴火後に残されたトンネルや空洞が痔ろうといった具合です。たびたび小噴火を繰り返しては、新しいトンネルを作ります。いったん膿が出つくして痛みが引いたときには、またひとつ新しい管ができたと思ってください。痔ろうは手術をしなければ治らないのです。
手術は、膿の管を入り口から出口まで切り開いて外に出す「切開開放術」が基本です。術後は下から肉が盛り上がり、自然に治るのを待ちます。ただ、この方法だと管の通り方や位置によっては、肛門のまわりの括約筋を大きく傷つけてしまう場合があります。括約筋の損傷が激しくなると、肛門の”締まり”が悪くなって、便もれや、まれに肛門が変形することもあります。
そこで最近は、膿管が複雑な通り方をしていたり、患部が奥深くにある、浅くても管の走り方によっては、括約筋を傷つけな「括約筋温存術」が選択されます。入院は複雑なタイプを除いては、二週間ほどですみます。
痔ろうは長い間放置すると、まれに「がん化」します。①発熱を伴う肛門のはれ、痛み②膿で下着が汚れる、症状があれば、早めに専門医の処置を受けてください。