痔(じ)は、肛門とその周辺に起きる病気の総称です。”やまいだれ”と”寺”の組み合わせでできた漢字を見ても、痔は治りにくく、墓に入るまでつきまとう病気のイメージが漂っているようです。
以前は「汚いところを他人に見せるのは恥ずかしい」「どうせ治らない」「手術は痛い」などと独りで悩み、ついつい痔を放置してしまうケースが多かったようです。妊娠や出産によって、痔の症状は悪化してしまいますが、それでも多くの女性は「我慢しなければいけないこと」と考えていたようです。
こうした痔の治療法は、医学の進歩に伴って、大きく変わってきています。日本では、古くは漢方薬を中心とした経験的な治療から始まり、明治時代には近代的な外科的治療法が登場。かつては、患部に注射を打って腐らせ、痔の部分をえ死させる「腐蝕(ふしょく)療法」が広まりました。手術せずに済みますが、痛みや出血が伴うといった問題もあります。
現在では、麻酔法が発達し、手術方法も格段に進歩しており、術後の痛みが少なく、しかも10日から2週間程度の短期間で完治し、障害も残らない治療法が開発されています。 一方、最近では進んで診察に訪れる患者さんが増えてきました。テレビや雑誌などで痔の話題が頻繁に取り上げられるなど、痔に関する知識が広まったことや、肛門科の治療技術に対する信頼度が増したことも要因の1つでしょう。
痔疾のほとんどは、手術しなくても、生活習慣を改善することで治ります。でも、放っておけば症状はどんどん悪化していきます。ですから、痛みをこらえて人知れず悩んでいたり、勝手な素人判断で治そうとしたりせず、こころ当たりの人はまず、肛門かでの受診をお勧めします。