痔(じ)の治療には、手術が必要であると一般的に考えられがちですが、手術をしなければならない痔は、想像以上に少ないのが実態です。
最近の内痔核の治療は、よほど重症でない限り手術は行いません。例えば「排便時に血が出る」あるいは「少し大きくなったイボが排便時に飛び出すがすぎにもとに戻る」といった初期の内痔核(いぼ痔)なら、もちろん手術の必要はありません。
一方、痔は良性の疾患です。膿(のう)の管が複雑に入り組んだ痔ろうを長期間放っておくと、がんに進展する場合がごくまれにありますが、それ以外の痔は放っておいても、がんになることはありません。
ですから、内痔核の治療は、患部を切除せずに治療する「保存療法」が基本となります。同療法では、日常生活の改善を中心に、補助的に座薬や軟膏(なんこう)などの外用薬を使用します。日常生活で注意することは、便通を整え、いぼ痔の原因となる便秘や下痢を防ぐことです。また、正しい排便を心がけ、排便後はもちろん、いつも肛門の周囲を清潔に保つことが肝心。さらに、アルコールや辛いものなど刺激物を取り過ぎたり、長時間いすに座っているなど、肛門への負担をかけないようにすることも大切です。
坐薬や軟膏などの外用薬には、出血、痛み、腫(は)れを抑える成分が含まれています。外用薬の一番の効果は、肛門に挿入された後に溶けて肛門内を覆うことで、排便の際に潤滑油となって肛門の負担を軽くすることです。
こうした「保存療法」を実践すれば、かなり進行した内痔核でも手術せずに”うまく付き合いながら”治していくことができます。