医療技術が進歩した現在、痔(じ)の手術では、手術中も手術後も患者様は苦痛をほとんど感じないで済むのが、当たり前となっています。
しかし、かつては「死ぬほど痛い」といわれていました。その代表的な手術法が「ホワイトヘッド法」です。痔と一緒に肛門の全周を切り取ってしまい、直腸粘膜と肛門の縁を縫い合わせるというもの。手術時間も長く、縫い合わせ箇所が多いため、術後に激しい痛みが伴います。
しかも、肛門の全周を切除してしまうため、肛門の正常な働きができなくなり、術後に排便コントロールがうまくいかなくなるという欠点がありました。おしりの感覚が鈍くなることで、便意が起こりにくくなったり、逆に下痢の場合は漏らしてしまうケースも少なくありませんでした。
さらに、つなぎ合わせた直腸の粘膜が数年後、肛門の外へ飛び出して、ちょうど直腸脱と同じようにおしりがベタつき、肛門周囲に湿しんができる場合もあります。また、縫い合わせた箇所が一部でもはずれたり、化膿したりすると、炎症が全体に広がり、治った後の肛門が狭くなることもありました。
このように、一生排便に苦労がつきまとう後遺症が残ったのでは、患者様はたまったものではありません。
現在では、こうした後遺症を治す手術方法もあるので、後遺症に悩まされている方は、ぜひ一度専門医で受診してください。
一方、脱肛の手術も進歩しています。とりわけ「結紮(けっさつ)切除法」なら、正常な部分まで切り取り過ぎることがないので、肛門機能に障害を与えません。手術が簡単で、出血が少なく、術後の痛みも少ないので、心配はいりません。