肛門科ですから、当然患者様は”おしりの異常”を訴えて来院されます。ところが、肛門や直腸を調べてみても何1つ病変を確認できないこともあります。 こうした場合、患者様の訴える症状は「就寝中の夜中に突然、おしりに異常とも思える激しい痛みを覚え、数分たつと何事もなかったかのように元に戻った」と、一様に同じ内容であることがほとんどなのです。
これは、肛門神経痛と呼ばれる症状で、直腸肛門付近に突然起こる発作性の疼痛(とうつう)です。発作は多くの場合不規則で、5~20分続いた後、自然に治まるのが特徴。夜間に起こるケースがほとんどですが、まれに昼間や排便時に生じることもあります。
肛門神経痛は”肛門患者”全体の約1%程度。きまじめで神経質な性格の人や、仕事や家庭などに何らかの問題を抱えている中高年女性に多く見られます。
病変が認められないのはもちろん、原因も明らかになっていないため、治療法も確立されてはいません。発作が頻繁に起こる場合は、鎮痛剤を処方することもありますが、一過性の場合だと痔疾患座薬を用いたり、痛む箇所を中心に肛門マッサージなどを行うことで、症状が軽減するケースもあります。
一方、患者さんの抱えている問題の解決や心理的治療を行うことで、症状が治まる例もかなりな割合を占めています。
臓器に異常がなく、患者様の典型的な訴えから、診断は通常、簡単です。患者様にとって疼痛が解消されないのは、大きなストレスになるでしょうが、決して命にかかわる病気ではありませんから、必要以上に心配することはありません。