女性週刊誌の広告の中で、特に目立って多いのが便秘薬を扱ったものです。言い換えれば、それだけ便秘に悩んでいる女性が多いということなのでしょうが、便秘薬が重宝がられる理由はそれだけではないようです。最近の女性は、朝とても忙しい。シャンプーやメイクなど、おしゃれに時間が取られます。便秘ぎみだとトイレに時間がかかりますから、とてもトイレに行く余裕などありません。
その点、寝る前に便秘薬を飲んでおけば、朝起きてトイレに座るや否や、すーっとうんちが出てくれますから大助かりです。溜まっていたうんちが出ると快適で、お腹ペチャンコになりますからスタイルを気にする女性には、特にありがたいようです。「夜、寝る前に飲んで下さい。翌朝には自然なお通じをお約束します。」そんな広告を目にすると、安易に市販の便秘薬に手を伸ばしたくなります。当医院が女性509人に対して行った「便通の実態調査」でも、便秘対策として市販の便秘薬や民間療法を用いている割合が非常に高いという結果が出ています。
確かに、市販薬は一時的に効果がありますが、思わぬ落とし穴もあります。便秘薬も常用すれば、効果がなくなってきます。効き目がなくなれば、使用量が増えるか、より強い薬へとエスカレートしていきます。他の薬物と同様、中毒症状が出て、薬を飲まなければうんちが出なくなる「便秘薬依存症」となってしまうのです。しかも、市販の便秘薬の多くは刺激性の下剤です。民間療法で用いられるアロエもまた、刺激性の下剤で、便秘の症状、程度に応じた処方や使用がなされていないのが実態です。常用すると、腸はほとんど自然な動きをすることがなくなり、腸内に溜まったガスを自然に出すことすらできず、お腹が膨らんでしまいます。腸も本来持っている蠕動(ぜんどう)運動をほとんど行えなくなるのです。当然いきむための腹筋も発達していませんし、腹筋の使い方も分からないので、出産シーンで「いきんで下さい」といわれても、いきむことができない女性も少なくないそうです。
便秘だからといって医療機関を受診するのは当院の調査ではわずか2.1%です。また、ある調査では、便秘が発症して5年以上経過してから医療機関を受診したという患者が調査対象の60%で、その間、市販薬を飲み続けていたという例が圧倒的です。市販薬でも効果がなくなって、医療機関を受診するというパターンでは、リスクが大き過ぎます。「薬を飲めば楽チンじゃん」という短絡的な認識は捨て、自然なリズムを日常生活の中で身に付ける努力を心掛けることをお奨めします。