からだの予防学「大腸がん」 その④

排便後、ポタポタと血がたれるとか、「走る」ように血が噴くというのは「内痔核」の疑いがある症状です。内痔核は大変多い痔疾患であり、肛門から出血があった場合、ほとんどが内痔核と診断されます。しかし、大腸がんの症状の一つに、肛門から血が出る「下血」「血便」と呼ばれる症状があります。痔が大腸がんの早期発見の妨げになってしまうことがあるのです。血便が「大腸がん」と「痔」とは、どちらとも肛門からの出血がみられる点で間違えやすく、大腸がんによる出血を痔と勘違いしてしまうことがあるからです。

注意しなければならないのは、血便があった際に内痔核と勝手に判断しないことです。特に、慢性的に内痔核で悩んでいる人は、“またか…”と思い内痔核への対処だけで済ませてしまうことがよくあります。つまり、内痔核のある人に大腸がんができたという場合には、大腸がんの危険信号を見逃してしまうことになりかねません。特に50歳以上の人の場合、内痔核と大腸がんの両方になっているとがありますので要注意です。大腸検査をしなければ、「痔である」と安心(?)はできないのです。

さらに困ったことに、患者さんだけでなく、医師までがそう思ってしまうことがあるのです。出血の症状で診察をし、痔が見つかった場合、医師もつい痔と決め込んで、大腸がんの検査を省いてしまうことがあるのです。また、大腸がんの検査に行って、その時は痔しか発見できなかったとします。すると、その後に大腸がんができたとしても、「以前調べた時に痔だったので、今回もそうだろう」と医師までもが考えてしまうのです。ですから、痔のある人は、普通の人以上に注意が必要です。まず出血がみられたら、必ず医師に診てもらうこと。その後も、定期的に検査を受けて大腸がんがないかどうかチェックすることが必要です。直腸指診といって、肛門から指を入れて、診察するだけで、診断のつくがんもあるのですから。

(平成12年12月20日 読売新聞夕刊 掲載記事)


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