私の診察室にはよく若い女性が訪れます。「あの、…」「どうしたのですか?」あの、…」と最初は決まって会話になりません。でも、長年の経験、というわけではないのですが、若い女性の場合、ほとんど病名がわかります。
「排便の途中、肛門がピリピリと痛みだして…」と、恥ずかしそうに切り出した女性(21歳・OL)の症状もやはり「切れ痔(裂肛)」でした。「便秘がち」というこの方に代表されるように、二十代前半の女性に多い切れ痔は、便秘のため便が硬くなり、肛門が切れる病気と言い換えてもいいかも知れません。病状が進むとポリープができ、肛門が狭くなりかなり痛みを伴います。また「トイレに行くのが怖い」といって、便意を我慢していると、便はますます硬くなります。大腸に溜め込まれている間、さらに水分が吸収され、傷口の悪化ー便秘ー症状悪化という悪循環に陥るからです。こうなると排便のたびに痛んで、中には半日ぐらいそれが続く人もいます。
最近は麻酔をかけたり、横向きに寝て下着を下ろして診察するなど”痛くなく、恥ずかしくない”方法が普及しています。若い女性にとっては、下着を脱がず、医師の顔を直接見なくてもいいのですから、気が楽です。私のクリニックで患者さんが書き継いでいる「”痔由人”日記」というノートには「肛門科の門をくぐる前は恥ずかしかったが、いざ診察を受けてみると全然気にならなかった」といった感想が多いのは、こうした理由からでしょう。切れ痔の症状改善は、治療より日常生活の方が大事です。食物繊維の多い食事をとるなど日常生活に気を付け、便通を上手にコントロールすることをお勧めします。