痔(じ)に心当たりのある人なら、素人判断で対処しようとせずに、まずは肛門科のある病院で診察を受けることをお勧めします。でも、「恥ずかしい」というイメージを持ったり、肛門科で行われている診察方法が一般によく知られていないせいで、不安ばかりが先行し、受診を後込みしている人も少なくないのでは。
こうした不安を解消してもらうために、私のクリニックを例に肛門科の診察方法を紹介します。
患者さんにはまず、「痛みの個所」や「出血の程度」「不快感の種類」などを細かく記入してもいます。これは、あらかじめ具体的な症状を把握することで、よりスムーズな診察がはかれることはもちろん、患者さんには症状を医師に包み隠さず話すための心の準備にもなります。
診察室では、医師がこの問診票に沿って、自覚症状についていろいろと質問します。そして、いよいよ”問題”の診察台。ここでは、患者さんのおしりを診せていただかなければなりません。温泉に入る場合などを除けば、人前で服を脱ぐこと自体めったにないことで、それがパンツともなれば、たとえ医師であっても恥ずかしいのは当然です。しかも、これまで肛門の診察体位といえば、両足を開いてあおむけになる砕石位が圧倒的で「産婦人科での診察体位」というイメージが、余計に恥ずかしさを増加させる一因でもありました。 そこで当クリニックでは、ベッドに身体の左側を下にして横向きになるシムス体位(左側臥位)をとってもらっています。これなら、パンツを少し下ろすだけで済み、医師と対面していないので、気がねなく受診できます。