痔(じ)核と同様に、裂肛(れっこう=切れ痔、裂け痔)の場合も、症状の進み具合によって治療法が変わります。
ごく初期、あるいは急性の場合には、切らない治療法と生活療法が用いられます。裂肛の最大の原因は、便秘による硬い便です。そこで便秘を解消するために、まず食生活を見直す必要があります。だからといって、消化の良いものばかりを食べたり、食事の量を減らしても便秘は解消しません。むしろ便秘をひどくしてしまいます。便を軟らかくするためには、食物繊維を豊富に含んだ食物や水分を十分にとることが肝心。また、入浴や座浴によって患部を清潔に保つことも大切です。ですが、それ以前にまず、インスタント食品や外食などに偏ったり、夜更かしや過度のダイエットなど”自然の摂理”に逆らった生活習慣を改めることが第一です。こうした生活療法を続けながら、同時に薬を用います。便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門(肛門)に注入する軟膏(なんこう)やゼリーなどです。
裂肛の症状が進むと、傷口がかいよう化して肛門が狭くなり、排便時の苦痛が増します。その痛みのせいで肛門の括(かつ)約筋がけいれんを起こし、いっそう痛みがひどくなります。このような場合は、肛門拡張術という治療を行います。麻酔をした上で肛門に指を入れ、狭くなった肛門を前後左右にゆっくりと広げていくというもの。入院の必要はなく、外来で治療できます。しかし、完治した後でも便秘などで硬い便が続くと、再び同じ場所が切れてしまいます。それを防止するには、油断せずに便を軟らかく保つための生活習慣を守ることが肝心です。