肛門(肛門)科には「おしりがかゆくて仕方がない」と訴えて来院する患者さんもたくさんいます。
一般におしりの周囲がかゆくなる病気を総称して、肛門掻痒(こうもんそうよう)症といいます。ごく軽いうちは肛門の周囲が少し赤くただれる程度ですが、悪化するとべっとりと赤くただれてしまったり、暗赤色にはれ上がったりすることもあります。こうした症状の違いによって、病名も肛門湿疹(しん)、肛門皮膚炎などと区別されています。
こうした肛門掻痒症の原因の多くは、排便後に便がきれいにふき取れていないことです。トイレットペーパーでは、便を十分にふき取れないばかりか、便を肛門周囲の皮膚に塗りつけてしまうことになります。皮膚に付いた便が、かゆみを発生させる刺激物になるわけです。かゆいからといって、つめを立ててポリポリやるとかき傷をつくり、バイ菌が入って化膿(のう)してしまうこともあるので、注意が必要です。かゆい時には、入浴や座浴でおしりを清潔にしてください。特にかぶれや湿疹がある時は、せっけんなどをつけずにお湯だけで洗います。外出先などではティッシュペーパーを水でぬらしてふくと良いでしょう。今は、便利なことに携帯用のおしり洗浄器まで発売されています。一番気をつけたいことは、勝手な素人判断で市販の薬を塗ったりしないことです。かぶれをいっそう複雑にし、治りにくくしてしまいます。特に粘液や膿(のう)が出るような肛門の病気がある場合なら、肛門はいっそう汚れやすくなります。ですからまず、こうした病気をきちんと治療することが肝心です。
このほか、肛門掻痒症は、アレルギーやそのほかの皮膚病、糖尿病、ギョウ虫などが原因で起こるケースもあります。