痔ろうと間違えられやすい疾患に、肛門のまわりの皮膚に細菌が侵入、感染を起こして化膿し、治りにくくなっている皮膚病がいくつかあります。
まず、「せつ」と呼ばれる病気は、俗にいうオデキのこと。おしりは汗をかきやすく、毛穴や脂を分泌する皮膚腺などから細菌が侵入しやすいため、化膿してしまうのです。自然に治ることも多いですが、あまり痛みが激しい時は、切開すればすぐ良くなります。
「粉瘤(ふんりゅう)」という病気も、おしりの周囲にできて、膿を排出することから、痔ろうと間違われやすい皮膚病。毛穴の出口に脂肪やコレステロール、老廃物などがつまることで化膿します。小指の先から握りこぶし大ほどの袋ができ、膿の貯留や排膿を繰り返します。痔ろうと同じように、皮膚の下に膿のトンネルをつくる場合もあります。治療は、膿の袋を切除する手術が必要です。
また、肛門周囲にある汗腺の1つであるアポクリン腺が炎症を起こすことで、その炎症が皮膚にまで広がって慢性化し、皮膚がゴツゴツと厚くなるのが、「膿皮(のうひ)症」の症状です。ゴツゴツした皮膚の下には、トンネルのように道ができて、膿がたまっていることから、「複雑痔ろう」と間違われることがあります。治療は、化膿している部分の皮膚だけを切開したり、切り取ったりする手術を行うのが一般的ですが、患部が広範囲に及んでいる場合には、患部周囲の皮膚まで大きく切除して他の部分の皮膚を移植する植皮術が行われることもあります。
前記した3つの病気は、いずれも痔ろうとまったく別の皮膚病で”肛門”とは無関係の疾患です。