のどや気管に魚の骨が刺さったり、モチを詰まらせるといった話はよく耳にしますが、肛門でもこうしたケースがあるのをご存知でしょうか?
「肛門異物」と呼ばれ、口から飲み込んだ”異物”が、そのまま消化されず肛門に刺さってしまいます。排便時に肛門に痛みを感じたり、出血を伴ったり、腫膿(しゅのう)や膿瘍(のうよう)が生じたりします。そのため、痔の疑いで来院されるケースがほとんどです。
肛門に刺さっている異物は、魚の骨が最も多く、そのほか義歯やつまようじ、縫い針などさまざまな例があります。
患者様の多くは、中年以降の男性。晩酌の際などにほろ酔い加減で気が緩み、誤って飲み込んでしまい、排出されずに肛門に刺さってしまうケースが最も多いようです。
このように、間違って口から飲み込んでしまった異物が肛門に刺さってしまう以外にも、自慰の目的で意図的に肛門から挿入した異物が、抜けなくなったりして肛門を詰まらせてしまうケースもあります。挿入された異物には、牛乳やヨーグルト、ケチャップなどのビン類や、こけし、洋傘の柄といったものもあります。
摘出方法は、異物の種類や、刺さったり詰まったりしている状態によってさまざまですが、その場所が肛門ではなく腸などの場合は、大掛かりな開腹手術が必要なケースもあります。
いずれにしても大人の場合は、原因の多くが”本人の不注意”ですが、なんでも口に入れたがる年頃の幼児がいる家庭なら、危険なものは手の届かない場所に保管したり、室内の整理整頓に努めるなど、周囲の大人たちが疾患を未然に防ぐ工夫をしていただきたいものです。