今回は、おしりに負担のかからない理想的な便について説明しましょう。
便の成分は、消化、吸収されなかった食べ物の残りかすです。人の消化能力では分解できないこうした残りかすを総称して食物繊維と呼んでいます。そして、食物繊維をたっぷりと含んだ便こそ、理想的な便なのです。
食料を十分にとれば当然、便の量は増えます。便の量が増えると通りは悪くなりそうに思えますが、実際は逆。腸内の内容物が少ないと、腸管の緊張が高まり、ちょうどふくらませる前の風船のようにきつく締まった状態になって、中身の通過に時間がかかります。
海藻やキノコ、穀物など食物繊維を多く含む食品は、便のかたさを増やし、便秘を予防してくれます。さらに、便の腸内滞留時間も短くするため、最近、日本人にも増えてきた大腸がんの予防にも効果があります。
大腸がんを防ぐには、脂肪の摂取を控え、食物繊維をたくさんとることが何よりも大切です。脂肪分をたくさん食べると、胆汁の分泌が盛んになり、大腸へと流れ込みます。こうした胆汁酸は、腸内の一部の細菌と影響しあって発ガン物質に変化するとみられており、要注意です。
一方、食物繊維は腸内細菌のうち、有用な働きをする菌のえさとなります。これらの菌は善玉菌と呼ばれ、胆汁酸の変化を抑え、がんの発生を防いでくれるのです。
食物繊維は、1日20~25グラム摂取するのが望ましいとされています。ところが、このところ日本人の平均食物繊維摂取量は年々減り続けており、現在は16~17グラム程度。肉食中心の欧米型の食事が浸透しているためです。
便秘はもちろん、まもなくガン死のナンバーワンになると言われる大腸がん予防のためにも、食物繊維を積極的に摂取して欲しいものです。