日本では、トイレで用を足した後、紙でおしりをふくことが当たり前のように思われています。ところが、日本トイレ協会会長の西岡秀雄さんによれば、トイレで紙を使っているのは、世界総人口の約3分の1に過ぎないそうです。実際、イスラム圏の国々やインドでは「指と水」がごく一般的です。サウジアラビアなどアラブ諸国には「指と砂」でふく地方もあるようです。
さらに、時代をさかのぼれば、世界中で実にさまざまな方法が取られていたようで、小石やヤシ、トウモロコシの毛や芯(しん)、樹皮、縄、海綿など、事例を挙げればきりがないほどです。
日本でも、紙が登場する以前には、フキやクズ、ヨモギの葉やわらなどがよく使われていたようです。フキの名は、おしりをふく「ふき」から派生したともいわれています
その後、製紙技術の発達で「ちり紙」が開発され、さらに機能的で経済的なトイレットペーパーも登場し、紙はおしりふきの主役の座を確立したのです。
しかし、シャワートイレの誕生で、日本のこうした”おしりふきの歴史”は転換期を迎えています。シャワートイレは、ふき残しを防ぎ肛門を清潔に保ってくれるのはもちろん、血行を促し痔(じ)の予防や悪化防止にも役立つため、医師の立場からもお勧めです。また、温水で肛門が刺激されることによって、排便反射を促す作用もあります。排便後、おしりを洗っているうちに、また便意をもよおすこともよくあるようで、”出し残し”も解消されるというわけです。