抗菌グッズが売れています。肌着など繊維製品をはじめ、トイレタリー、フロッピー、ボールペン、ぬいぐるみ、抗菌加工した銀行のキャッシュカードまで登場しています。
価格は通常より2~3割高いですが、市場は拡大しており、1995年の市場規模は推定約5,000億円といわれています。現代人の清潔志向を反映した人気商品といえますが、共用品ならともかく、自分一人しか使わないものにまで抗菌加エを求めるのは、若者たちに広がる「清潔ブーム」が背景にあるようです。
細菌やウイルスなどは全部「悪玉」と思っている人が、少なくありません。しかし、うんこの8分の1は細菌です。それは人間が多くの細菌を腸内で養い、人間と体の中の細菌とが互いに助け合って生きているからです。要するに、人間も動物も、この世に生きる者はすべて膨大な数の細菌との共生を運命づけられているのです。これは清潔であるとか、不潔であるという以前に、自然界が仕組んだ宿命にほかなりません。それをことごとく排除してしまうつもりでしょうか。
抗菌剤を使用し続けると、抗菌剤に耐性をもった細菌が生まれてくる可能性があります。そうなると、乳幼児や老人など、抵抗力の弱い人には、大変やっかいなことになるのです。無菌状態を求めるということは人間の生物としての存在を否定することなのです。