上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受ける重要性についてお伝えさせて頂き、並びにくにもと病院での上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をお勧めさせて頂きます。

日本における胃癌の死亡者数

皆さん、日本人に胃癌が多いことはご存知と思います。

胃癌で亡くなられた有名人
古くは夏目漱石(死因は胃潰瘍とされていますが、検査されておらず胃癌であった可能性あり)、歌手の越路吹雪さん、アナウンサーの逸見正孝さん、女子プロレスラーのジャッキー佐藤さん、漫才師の今いくよさん、など胃癌で亡くなった有名人は数えるときりがありません(古くてすみません)。

日本における胃癌の死亡者数及び罹患者数
(国立がん研究センター癌の統計2022から)

近年日本において衛生環境の改善と診断・治療技術の向上により、胃癌による死亡者数は減少していますが、2022年発表の最新の集計でみると

部位別予測癌死亡者数(2021年のデータ)

日本人の胃癌死亡者数は
男性:27,200名(肺癌、大腸癌に次いで3位)
女性:14,800名(大腸癌、肺癌、膵臓癌、乳癌に次いで5位)、となっています。

一方胃癌の罹患者数(胃癌になる人)をみると

部位別予測癌罹患者数

男性:90,000人(前立腺癌に次いで2位)
女性:40,500人(乳癌、大腸癌、肺癌に次いで4位)となっています。

  1. 胃癌の死亡者数と胃癌罹患者数の意味する事

    上述した胃癌のデータは以下の事実を示しています。

    胃癌で亡くなる方は、胃癌にかかる方の30%程度である(70%は胃癌では死なない)。胃癌は治る病気である!

逆にいうと、胃癌は根治できる(完全に治せる)状態(早期)での発見が可能であり、早期発見さえできれば死なない、治る病気である、ということが言えます。

  1. 治る胃癌を発見するためには定期的な上部消化管内視鏡検査が必要です
    • あなたの胃の痛み、胸やけなどの症状が胃癌や食道癌から来ている場合、治療を行っても治らない進行癌であるが殆どです。
    • 一般的には早期胃癌、早期食道癌には殆ど症状がありません。
    • 治る(死なない)胃癌や食道癌を発見するためには、症状のないうちに定期的な上部消化管内視鏡検査を行うことを強くお勧めいたします。

上部消化管内視鏡検査で発見・診断可能な疾患

  1. 胃の検査の種類と特徴
    胃の検査には、お勧めする内視鏡検査の他、バリウムによるX線造影検査があります。エコーやCTスキャン、MRIなどの画像検査では、胃(や大腸)の助かる早期癌は診断できません(これらで診断可能な胃癌は殆どが助からない進行癌です)。
  1. 胃バリウム検査
    胃バリウム検査は、日本では古くから広く行われており、身体への負担も少なく、大変良い検査ですが、内視鏡検査に比べると以下の弱点があります。

    1. 救命可能な早期胃癌の発見頻度が低く見逃されやすい。救命可能な食道癌はほぼ発見できない(検査の精度が低い)。
    2. もしもバリウム検査で異常を指摘されると、改めて胃カメラを行わなくてはならない(二度手間となる)。
    3. バリウムで異常を指摘されても、生検(組織検査)ができないため、確定診断に至らない(大きな欠点です)。
    4. バリウム検査後に下剤を服用して、バリウムを排泄する必要があるが、特に便秘気味の女性では検査後、バリウムがなかなか出ず大変。
    5. 放射線被ばくが避けられない。
    6. 治療ができない。
  1. 内視鏡検査
    内視鏡検査は、「辛い、苦しい」を除くと、上述した胃バリウム検査の欠点がみられない検査であります。発見・診断可能な疾患は、食道、胃、十二指腸のほぼ全ての疾患です。代表的な病気を以下に示します。

    1. 食道疾患
      食道癌、がん以外の食道悪性腫瘍(悪性リンパ腫、悪性黒色腫などの肉腫)、食道ポリープ、食道粘膜下腫瘍、(各種原因で生じる)食道潰瘍や食道炎、食道炎、など
    2. 胃疾患
      胃癌、癌以外の悪性腫瘍(悪性リンパ腫、内分泌細胞癌などの肉腫)、胃潰瘍、胃ポリープ、胃粘膜下腫瘍、胃炎、ピロリ感染の有無(内視鏡は疑いで、確定診断は別の検査になります)など
    3. 十二指腸疾患
      十二指腸潰瘍、十二指腸悪性腫瘍(癌、悪性リンパ腫、内分泌細胞癌など)、十二指腸ポリープ、十二指腸粘膜下腫瘍、各種十二指腸炎、など

    また、内視鏡の最大の利点として、食道・胃・十二指腸の早期癌の一部、潰瘍の止血等の内視鏡による治療が可能であり、内視鏡以外の他の方法では治療はできません。

上部消化管内視鏡検査の辛さを軽減するために

通常は、経口(口からの)内視鏡検査を行いますが、

  1. これまでに口からの内視鏡を何回か行っており、大して辛くはない方
    これまで通りの経口内視鏡検査をお受け下さい。
    以前に口からの内視鏡が死ぬほど辛くて、できれば2度とやりたくない。でも、胃や食道の症状(胃痛や燕下時痛、胸やけなど)がある、ご家族に食道癌や、胃癌の方がいらっしゃる(危険率は3倍程度とされています)ので心配、などの方は、くにもと病院では以下の2,3の方法による苦痛の少ない胃カメラが可能です。
  2. 麻酔による、経口内視鏡検査
    「意識下鎮静」と言いまして、眠った状態で苦痛の少ない胃カメラが可能ですが、

    • 重篤な呼吸器疾患や心疾患のある方は、この方法はお勧めしません。
    • 終了後、回復まで2時間程度の安静時間が必要となります。
    • 検査終了当日の車の運転はできません(麻酔の効き返しによる交通事故の可能性があります)。

    ご希望の方は、外来受診時にお申し出ください。

  3. (麻酔なしでの)経鼻内視鏡検査
    • 経鼻内視鏡検査の利点
      何といっても鼻からの内視鏡は口からのカメラに比較して細いため(うどんと冷や麦程の太さの違い)楽に内視鏡検査を行うことが可能です。以前、経口内視鏡と経鼻内視鏡の両方を行った患者さん、約50名に、「口からのカメラの辛さを10とすると、鼻からのカメラの辛さは数字でどのくらいですか?」とのアンケート調査を行いました。その結果、経鼻内視鏡の辛さは、平均で2.9でした。口からの内視鏡に比較して鼻からの内視鏡はかなり楽に行えます。中学生以上では、上述の麻酔なしでの内鏡検査が十分可能です。
      特に若い方、症状のない検診目的の方、上述の「口からの内視鏡が辛かった」の方にはお勧めです。
    • 経鼻内視鏡の欠点
      しかし、経口内視鏡に比べて、経鼻内視鏡には以下のいくつかの欠点もあります。

      1. そもそも鼻からの内視鏡を行えない方がいらっしゃる
        心臓や脳の病気があり、抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用中の方は行えません(鼻血が止まらなくなる恐れがあり、「禁忌:施行してはいけない!」となっています。
      2. 内視鏡が鼻を通過しない
        日本人は、欧米の外国人に比べて鼻が小さい(低い)ため、内視鏡が(両方の)鼻を通過しない方が20人に1人位いらっしゃいます。それらの方では、細い経鼻内視鏡を口からに切り替えて検査させて頂きます(通常の口からの内視鏡よりは大分楽にできます)。
      3. 経口内視鏡よりも若干検査精度が落ちる
        経鼻内視鏡は細いため、光量が少なく、解像度も経口内視鏡に比較してやや悪いため、内視鏡検査の精度がやや低下します。「詳しく診てほしい」方で、何とか経口内視鏡を我慢できる方は経口内視鏡をお勧めいたします。
      4. 治療ができない
        内視鏡径が細いため、治療処置具が使用できません。潰瘍の止血や癌・ポリープの切除など治療が必要な場合は、(麻酔しての)経口内視鏡が必要です。
  4. 適切な内視鏡検査の間隔
    ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)の感染は胃癌の危険因子です。

    1. ピロリ菌が陰性の方:1-2年に1度の検査をお勧めいたします。毎年の内視鏡検査は必ずしも必要ありません。
    2. ピロリ菌が陽性の方:前回の検査で異常がみられない場合でも、早期胃癌やその他の胃の病気を発見する目的で、年に1度の内視鏡検査を強くお勧めいたします。
    3. ピロリ菌の除菌を以前行った方:除菌により胃癌の危険性は低下しますが、除菌後10-15年は除菌していない方と胃癌の発生率は変わらず、10-15年後以降になって除菌による胃癌の発生頻度が徐々に低下するとされています。年1回の内視鏡検査を強くお勧めいたします。
    4. ピロリ菌が陰性か陽性がわからない方:一度内視鏡検査をお勧めいたします。内視鏡検査で、ある程度、ピロリ菌がいるかいないか診断可能です。ピロリ菌がいそうな場合、いるかいないか迷う場合は更なる検査を行います。

    尚、ピロリ菌が陽性の場合、除菌するかどうかにつきまして外来で個別に相談を致します(健康保険で除菌を希望される方は内視鏡検査が必要となります)。

くにもと病院における上部消化管内視鏡検査

    1. 専門家のチームによる内視鏡検査
      当院では、経験豊富な、内視鏡学会専門医・指導医の医師とスタッフによる精度の高い安心の上部消化管内視鏡検査が可能です。
    2. 最新技術の導入
      当院では最新の内視鏡機器・検査技術を採用し、迅速かつ正確な診断を提供いたします。
    3. 快適な検査環境
      患者様の快適さを考えた検査室や回復室をご用意しています。
    4. 患者さんの負担軽減
      辛くない内視鏡を行うための、「麻酔による経口内視鏡」や「経鼻内視鏡」が可能です*

*「麻酔による眠って行う経口内視鏡」や「経鼻内視鏡」の施行には前述の制限等がありますので、ご希望の方は診察時にお申し出ください。

終わりに

  • 胃や食道の症状のある方、ご家族が胃癌になられた方、症状は特にないが、日本人に多い胃癌が心配、な方は健康のために今すぐ行動をお願いいたします!
  • 健康な未来のために、今すぐお電話で外来のご予約をお願いいたします。
文責:くにもと病院消化器病センター長
斉藤裕輔


お問い合わせ先:
医療法人健康会くにもと病院
電話: 0166-25-2241